乳がんで失われたバストを取り戻す手術を乳房再建と言います。再建には2つの方法があります。自分の組織を使用する筋皮弁法と、人工乳房(インプラント)を使うインプラント法です。筋皮弁法には背筋を使う方法と腹筋を使う方法があります。インプラント法にも単純に挿入する方法と皮膚を引き伸ばしてから挿入する方法があります。挿入するインプラントにもシリコンジェルやコヒーシブシリコンジェルが入ったものがあります。再建する時期にも乳腺全摘術と同時に再建する場合とあとで二期的に再建する場合があります。全摘術にも通常の胸筋温存乳房全摘術もあれば、乳頭・乳輪を残す皮下乳腺全摘術があります。どの方法をいつ受けるかを決めるだけでも一苦労です。さらに大事なのは医師選びです。
以下が薬事承認され、人工乳房(インプラント)による乳房再建が公的健康保険適用になりました
今までより少ない自己負担金で、乳がんによって失われたバストを再建できるようになりました
再建の方法には、大きく次の2つがあります。
患者さんの皮膚・皮下脂肪・筋肉を移植する方法です。背筋と腹筋を用いる方法があり、それぞれ「広背筋皮弁」「腹直筋皮弁」と呼ばれます。皮膚が足りているときは筋肉と脂肪だけ移植します。これを「筋脂肪弁」といいます。
(図6―2参照)胸の筋肉の下に人工乳房(インプラント)を入れる方法を「インプラント単純挿入法」といいます。皮膚に余裕がないときはティシュー・エキスパンダー(組織拡張器)と呼ばれる大きめのインプラントを入れ、皮膚が伸びてから通常のインプラントに入れ替える「組織拡張法」を行います。
人工乳房(インプラント)による乳房再建が保険適用になりました
「ナグモクリニックの二次再建は、日帰りで可能です」
これまでの組織拡張法は皮膚を反対側の乳房より大きく拡張するために 直後の痛みが強く、洋服の上からでもふくらみが見えてしまい人目も気になりました。
また3ヶ月から半年後に入替が必要で、2倍の費用がかかりました。つまり身体的にも精神的にも、時間的にも、経済的にも負担が大きかったのです。そのため多くの女性は再建をあきらめていました。
そこで新たに考案された再建方法が「乳房再建一回法(二次一期再建)」です。アンダーバストを小さく切って、反対側の乳房をかたどったインプラント(シリコンバッグ)を挿入して終わり。直後から対照的な乳房がよみがえります。この女性は反対側の豊胸術も行っていますが、痛みも少なく、入院も不要で、費用も1回分ですみます。
筋皮弁法や組織拡張法に尻込みしている方は、「ナグモクリニック」までご相談ください。⇒(南雲医師/談)
筋皮弁は背中やお腹の筋肉を剥がしますが、根元は切り離さずに血流を保ちます。しかし移植した皮膚や皮下脂肪は、ときには血の巡りが悪くなって腐ることがあります。これを「壊死」と呼びます。壊死した組織は外来で切り取られ最終的には治りますが変型の原因になります。
移植した皮膚は乳房の皮膚とは異なりますので、ツギを当てたように見えます。
乳房が大きく取られているとき、対側の乳房が大きいとき、医師の技術が未熟なとき、対称な形にはならないでしょう。
広背筋皮弁の場合は、背中に大きな斜めの傷が付き、皮膚がへこみます。腹直筋皮弁なら、お腹に縦または横の大きな傷が付き、腹筋の力が弱くなります。ときには下腹部にヘルニア(脱腸)が生じます。筋皮弁法を推奨する医師はこれらの問題をほとんど気にしませんが、患者さんは気にします。
シリコン製の半球形の袋の中に、シリコンジェルが入っています。手術でバストに挿入することによって乳房の形をつくります。
豊胸術や乳房再建に使用されます(表6-1参照)。※医師により以下のような色々な呼び方をしています。
シリコンジェルバッグ | コヒーシブシリコンジェルバッグ | |
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内容 | 流動性シリコンジェル。 ソフトシリコンとも呼ばれる。 |
より結合性の高いコヒーシブ(粘着力のある) シリコンジェル。 ファームシリコンとも呼ばれる。 |
使用実績 | 長期間の使用実績がある。 | 長期間の使用実績がない。 |
質感 | 現在用いられているインプラントの中で 最も柔らかい。 しわになりにくく、他のインプラントと比べても より自然なさわり心地である。 |
流動性がなく、さわり心地が ソフトシリコンジェルよりも硬い。 挿入する場合には、他の乳房インプラントよりも 大きめの傷になるか、小さいものしか入れられない 可能性がある。 |
破損 | 破損しても、ジェルは被膜内にとどまり、 形状は変化しない。 そのため、患者が異常を発見することはできない。 長期間放置すると被膜周囲に浸潤する。 |
破損しても、ジェルは被膜内にとどまり、 形状は変化しない。 そのため、患者が異常を発見することはできない。 粘着力があるため周囲に浸潤しにくい。 |
認可状況 | 米国では乳房再建に対して認可。 EUでは認可。 |
米国では乳房再建に対して認可。 EUでは認可。 |
※この表は横にスクロールできます
人工物は感染に弱いのが欠点です。十分に配慮していてもときに感染を起こします。このときはインプラントを抜去しないと感染は収まりません。
どんなに丈夫につくられていても、ときに破れることがあります。シリコンジェルは身体に吸収されないので破損したかどうかは超音波検査をしないとわかりません。
ありません。
インプラントの周りにできた膜が硬くなることをいいます。これが一番頻度の高い問題です。
生体は、体内に入り込んだ異物から身を守るために、異物の周りを瘢痕(傷跡)組織による膜で被います。これを「被膜」といいます。薄くて広い被膜が形成されれば動きがあり柔らかい乳房が再建されます。厚くて狭い被膜のときは、インプラントが締め付けられ硬い乳房になります。これを「被膜拘縮」と呼びます。 乳がん手術による傷や引きつれが強いときや、放射線がかかっているときは被膜拘縮が起きやすくなります。被膜拘縮を予防するためには以下のような注意が必要です。
いずれの方法を用いるかはあなたが受けた乳房切除の術式によります。ハルステッドの手術 かつて「定型的乳房切除術」と呼ばれたこの術式は、胸筋をすべて切除するため組織欠損が大きくインプラントだけでは再建ができません。組織量の多い腹直筋皮弁が用いられます。
皮膚の欠損はありますが、胸筋が温存されているため、皮膚と乳房のふくらみだけを補充すればいいのです。筋皮弁法では広背筋皮弁を用いることが多いようです。インプラントを用いる場合は、組織拡張法によって皮膚を引き伸ばしてからインプラントに入れ替えます。
乳頭・乳輪やしこり直上の皮膚を温存し、乳腺だけを全摘する方法です。皮膚を補充する必要がないため、インプラント法で再建が可能です。自分の組織を用いるときは筋脂肪弁を使うでしょう。同時再建に向いています。
そもそも乳房温存とは乳房の形を美容的に温存することを意味しているのですから、その術後に再建が必要になること自体が矛盾しています。しかし、乳房温存療法が普及するに従って、ひどい変形をきたした例をよく見ます。放射線が照射してあるために再建はきわめて困難です。乳房温存療法後に局所再発し全摘となった場合も、同様に再建は困難です。
これまで乳房再建の適応は「早期乳がん」「根治手術後長期間経過例」「遠隔再発がない例」といった条件がありました。しかし、再建しても「局所再発の発見の妨げとはならない」「局所再発率は変わらない」「生存率は変わらない」ということが科学的に証明されたため、今では「いつでも」「誰でも」「どんな乳がんでも」再建してよいと言われています。10年後に再建されて、失われた乳房が戻っても、失われた人生は戻りません。再建したいときがするときなのです。
乳房再建はその実施時期によって同時(即時)再建と二期再建に分けられます。同時再建は乳腺全摘術と同時に乳房形態を回復できるため理想的ですが、以下の場合には二期再建が望ましいでしょう。
肉腫や局所進行乳がん、炎症性乳がんでは局所再発率が高いため、術後一定期間を経てからの二期再建が望ましいでしょう。
インプラントは感染を生じやすいため、乳がんまたは他の原因によって術野に感染がある場合は二期再建とすべきです。
どのような乳房切除術をするかによって再建術の方法や難しさが異なります。そこで再建を希望する場合は以下のような注意が必要です。
再建した乳房がどんなにきれいにできても、もともとのバストにはかないません。再建できるからといって必要のない全摘は避けるべきです。
乳腺の全摘をしなければならないときも、乳頭・乳輪や皮膚を極力温存して、傷も最小限にしてもらいましょう。
筋皮弁は身体の他の部位に新たな傷と筋力の低下を生じます。インプラントならそれがありません。ただしインプラントに対する十分な技術と経験がある医師がいないときは、再建を受けるべきではありません。
術後6カ月以上を経てからが好ましいでしょう。その理由は、 以下の2つです。
対側の乳頭の先端を取って、再建乳房に移植します。これから授乳を希望する人や、乳頭が小さい人には適しません。
再建乳房の皮膚を切って丸めて乳首の高まりをつくります。皮膚の緊張が強いときや、放射線がかかっている皮膚では、すぐに平らになってしまいます。
太ももの内側の黒ずんだ皮膚を植皮します。技術の差によって、仕上がりが大きく違います。
対側の乳輪に似た色を入れ墨します。まずは薄い色を小さめに入れて、足りないときはあとで追加します。
乳房再建は左右対称な状態をつくることが目的です。しかし再建乳房は皮膚が足りないことが多いので垂れることはありません。対側の乳房がお椀型ならいいのですが、しぼんだり垂れ下がったりしているときは再建乳房に合わせて治す必要があります。
対側の乳房が小さいときやしぼんでいるときは、インプラント(シリコン性の人工乳腺)を挿入してお椀型のバストをつくります。
乳頭の位置が垂れ下がっているときは、乳輪周囲の皮膚を切り取って、乳頭を吊り上げます。
乳房が大きすぎて下がっているときは、乳腺と皮膚を大きく切除して小振りのバストにします。
これまで、乳房再建に健康保険が効くのは、乳がん手術によって皮膚が足りないときや、腕が上がらないといった機能障害があるときに限られ、美容目的では保険は効きませんでしたが、2012年9月に組織拡張器法が保険適用となったのを皮切りに、2013年7月に米国アラガン社の人工乳房(インプラント・ラウンド型/丸型)が、2014年1月からは自然な形のバストを再建できる同社の最新タイプの人工乳房(アナトミカル型/しずく型)が保険適用になりました。これにより、人工乳房を用いたすべての乳房再建が公的保険の対象となりました。(※傷の縫い直し、乳輪の再建は自費になります)また、医療費控除の対象となり、税率分が還付されることが多い(ならないこともある)ので、確定申告のときに領収書を持って税務署に相談に行きましょう。ちなみに私のクリニックでの再建の費用をご紹介します。詳しくは各院にお問い合わせください。
詳しくはナグモクリニックまでお問合せ下さい。